2017年10月11日水曜日

タイへのICAO重大懸念、2年ぶりに解除へ

国際民間航空機関(ICAO:カナダ・モントリオール)は、タイ運輸省航空運輸局(CAAT、サトーン区)の許認可体制に問題があるとして出していた重大な懸念(SSC)を、今月いっぱいで解除する方針を固めました。10月6日に本部で行われた臨時理事会の席上、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル発射実験による国際線航空路妨害を非難する決議と合わせて日本など理事国が合同で提案し、認められたものです。

タイでは2000年代中頃以降、LCC(格安航空会社)やチャーター専門キャリアなどが多数設立されましたが、中でもチャーター専門キャリアの事業計画が甘く雨後の筍のごとく現れては次々と消えていきました。日本への便を運航した会社でも、ビジネスエア(8B=BCC)やジェットアジアエアウェイズ(JF=JAA)は既になく、アジアアトランティックエアラインズ(HB=AAQ、クロントイ区)も当初の計画と比べてうまく行っているとは必ずしも言えません。

この状況を重く見たICAOは2015年2月、タイ運輸省へ抜き打ち監査に入り、AOC(航空運送事業許可)の審査体制が不十分だとしてSSC指摘を内示。6月、正式にSSCの発行を受けました(前記事「ICAO重大懸念でノックスクート運航開始できず」参照)

日本や欧米など先進国はSSCを発行されている国の航空会社について、新規路線の開設や既存路線の増便、新機材導入をできなくする制裁措置を設けているため、タイ国際航空(TG=THA チャトチャック区、SET上場)は増便ができず、エアバス359やB789などの新機材を日本線へ投入できない状態。タイエアアジアX(XJ=TAX、ドンムアン区)は新千歳~ドンムアン線の開設を見送りました。ノックスクート(XW=NCT、ドンムアン区)は成田・関空~ドンムアン線の開設ができず、代わりにScoot(TR=TGW、シンガポール)がシンガポール発ドンムアン経由で就航する事態になりました(前記事「Scoot成田線にバンコク経由便が登場」参照)

プラユット・チャンオチャ首相とアーコム・トゥームピタヤパイシット運輸大臣はSSC解除を目指し、国際協力機構(JICA、東京都千代田区)を通じて国土交通省航空局(JCAB、東京都千代田区)や欧州航空安全庁(ドイツ・ケルン)などに支援を要請。日本はCAATがこのまま制裁を受け続けた場合、内閣総理大臣・安倍晋三(自民党、衆院山口4区)が掲げる「2020年までに訪日外国人年間4000万人」という目標の達成に支障が出ると判断し、要請を受け入れることにしました。そして、CAATの体制を2年かけてゼロから見直すと共に、AOCを受けている国内の各航空会社に対して再認証の手続きを行いました。

再認証は今年2月のバンコクエアウェイズ(PG=BKP チャトチャック区、SET上場)を皮切りに、THAIやタイエアアジア(FD=AIQ)なども順次手続きを完了。今年6月、正式にSSC解除を求める嘆願書がICAOへ提出されていました。ICAOでは11月の定例理事会で審議して、来年3月の夏ダイヤまでに解除する予定でしたが、北朝鮮のミサイル問題に伴う緊急決議案を審議する臨時理事会で併せて取り上げることにし、早まる結果となりました。

東京で編集されている業界専門サイト『トラベルビジョン』は、国交省航空局国際航空課担当者の話として

「ICAOの報告書を検討し問題ないと判断した時点で制裁を解除する」

と伝えました。タイ国際航空日本支社(東京都千代田区)も「国交省の対応を注視する」とのコメントを出したと報じられています。タイエアアジアXは、10月中にSSC解除が実現することを条件に12月から関空~ドンムアン線の増便に踏み切る予定で、既に航空券の販売を始めています。

《12月1日から有効》
XJ612 DMK0155~KIX0840 DAILY
XJ613 KIX0955~DMK1355 DAILY

(機材はエアバス333 プレミアムフラットベッド=ビジネスクラス12席、レギュラーシート=エコノミークラス365席)