2018年2月8日木曜日

日本~サイパン直行便が廃止へ、バニラエアに商機か

デルタ航空(DL=DAL アメリカ・アトランタ、NYSE上場)は、日本とミクロネシアを結んでいる直行便2路線を5月のゴールデンウイーク明けに廃止する方針を固めました。対象は、サイパン(北マリアナ)とコロール(パラオ)の2路線。今年1月には成田~グアム線も廃止しており、旧ノースウエスト航空(NW=NWA)以来30年近い歴史のあったデルタのミクロネシア路線は、今後米軍チャーター輸送などが細々と続けられるものの、民間人は乗れなくなります。

《成田発5月5日、コロール発5月6日のフライトをもって取りやめ》
DL281 NRT2030~ROR0125+1 火・土曜運航
DL282 ROR0450~NRT0915 水・日曜運航
《5月6日のフライトをもって取りやめ》
DL297 SPN1615~NRT1900 DAILY
DL298 NRT1020~SPN1455 DAILY

(機材はB757 ファーストクラス20席、コンフォートプラス=プレミアムエコノミー41席、メインキャビン=エコノミークラス132席)

成田~サイパン線は、旧ノースウエスト航空時代の1989年(平成元年)に就航。当時は旧コンチネンタルミクロネシア航空(CS=CMI)と日本航空(JL=JAL)も運航しており、3社による旅客獲得競争が繰り広げられ、大東亜戦争期の負の遺産を乗り越えた南海のリゾート地として年間40万人以上の日本人観光客を送り込むことに貢献しました。

しかし、航空会社側からみると最も客単価の安いパッケージツアー客に依存する体質となっていて、座席稼働率は高い水準を維持しているものの収益ではほとんど貢献しておらず、2005年に日本航空が撤退。その後コンチネンタルと合併したユナイテッド航空(UA=UAL)も撤退し、成田とサイパンの間の直行便はデルタだけとなってしまいました。

直行便の便数が減ることによって、北マリアナ諸島へ入国する日本人観光客も年々減少の一途をたどり、2011年には北マリアナ全体の外国人観光客がピーク時の半分となる53万人まで落ち込みました。その後回復はしたものの、2009年からグアムを含めた最長45日間のビザなし渡航(Guam-CNMI VWP)が認められている韓国、台湾と、北マリアナのみのビザなし渡航(CNMI VWP)が導入された中国人が主流を占めるようになり、日本人はさらに減少していきます。2017年(平成29年)には、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が核軍拡の集大成としてグアム近海を狙ったミサイル発射実験を行うと宣言し、ミクロネシアの日本人向け観光産業は壊滅的ダメージを受けました。グアムの日本人送客実績がピーク時から30%減にとどまっているのに対し、サイパンをはじめとする北マリアナはなんと10分の1。これでは、本格航空会社(FSC)の路線として採算を維持するには厳しい状況で、特に収益にシビアな米系大手は日本をアジアのハブとしてきた路線政策自体の見直しもあって、やれ北朝鮮だミサイルだなどと騒ぐ以前の段階で撤退が検討されていたのです。

そして、デルタは今年1月8日のフライトをもって成田~グアム線から撤退。代わりに日本航空が毎日2便運航へ増強しますが、ゴールデンウィークが明ける5月6日を最後にサイパン・パラオ線も取りやめ、日本発のミクロネシア路線から完全に撤退することになりました。

しかし、今回のデルタ撤退をまたとないビジネス拡大のチャンスととらえられる日系キャリアが、実はあります。LCCのバニラエア(JW=VNL、千葉県成田市)です。バニラエアは立ち上げにあたって、成田空港をハブにしてマリンリゾートやレジャー需要の強い国際線を攻めるポリシーを掲げ、台北やフィリピンのセブなどといった路線を次々と就航させていきました。特にセブは親会社のANA(NH、東京都港区)も含め他の日系キャリアが飛んでおらず、JALがハワイ路線で築いたような金城湯池のディスティネーションへ発展していける可能性がある場所です。

今回、直行便が一旦無くなるサイパンもまた然り。バニラエアが立ち上げにあたって手本にしたとされるジンエアー(LJ=JNA、韓国・ソウル)は既に就航しており、一方でジェットスター・ジャパン(GK=JJP、千葉県成田市)やPeach(MM=APJ、大阪府田尻町)など他の日系LCCは就航を表明していません。バニラエアは初心に返って取り組めば、大きな成功を収められる可能性が秘められています。